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越前市 澤井

プラスチック(−散歩道−)

この言葉は、語源とは非常に離れた意味で使われています。

プラスチックから大部分の人は次のようなものを連想するでしょう。
  ペットボトル、各種容器、フィルムなど
ここに例示したものはフィルムを除いて硬いものです。また、フィルムも厚ければ硬くなります。

人類が最初に合成に成功したプラスチックは、多分ベークライトです。 主要原材料は石炭でした。
この発明の少し前、セルロイドが作られましたが、原材料の一部は天然素材でした。

プラスチックの言葉を考えましょう。
 語源は plaster(石膏、粘土、壁土など)です。これらは容易に変形でき、元に戻らない性質を持っています。
 この性質を塑性(そせい)(plasticity)といいます。

塑性を持ったものの全体をプラスチックスといいますが、 日本ではいつの間にかプラスチックと言い慣わされるようになりました。
()とは、むかし彫刻などに用いた紙粘土などを言います。 古美術に、塑像という彫刻がありますね。

ところで、最初に例示したいくつかのものは、硬くて弾力があります。 すなわち変形しても元に戻る性質があります。プラスチックの性質とはまるで違いますね。

それでは、我々の眼に触れるプラスチックは、なぜプラスチックなのでしょうか?
実は、型枠に入れて製品に加工される直前の、弾力のない糊状のものがプラスチックなのです。 型枠の中で固まり、プラスチックでなくなったら製品の出来上がりです。
皆さんがプラスチックと思い込んでいるは、実はプラスチックでないから製品の形が保たれ、利用できるわけです。

プラスチックは、変形しても内部にひずみが残りません。 したがって十分に混ぜ合わせることが出来、均質な材料を作ることが出来ます。また自由な形に加工できます。
なおビニールやポリエチレンなど、一部には熱を加えるとプラスチックに戻るものもあります

人類は随分昔から多くのプラスチックとかかわっています。粘土、ロウ、漆、石膏、シックイなど。 また、琥珀(こはく)もプラスチックですね。 この延長上で、プラスチックを樹脂と訳しています。

日本人はフィルム上に加工されたものを見るとビニール、繊維状のものはナイロンと言いますがこれも変ですね。

合成樹脂の分野に永年携わった友人は、プラスチックに違和感を感じないそうです。 逆に、金属も塑性加工することがあるのになぜプラスチックと呼ばないのだろうか?と言われました。

プラスチック(から作った)製品をプラスチックと呼ぶのは、かなり抵抗があります。 しかし周囲に押されて自分でもつい呼んでしまいます。言葉が生き物だからでしょうか?

本文を書き終わってからからウェブスターを見ました。 辞書には、容易に成型でき、利用するとき硬くなる非金属の合成物およびその製品とありました。 どうやら、違和感を感じるのは自分だけのようです。plasticityを失っているのですね。

参 考
  plastic:可塑性; plastics:可塑材; 塑:紙を水に溶いて糊を混ぜて練ったもの
  plastic:語源 = ラテン語(plassein 形作る)
  plaster:容易に成型できる糊状のもの
最終更新:17/08/08
新規掲載:05/04/26
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