散歩道 > 恐竜の鼻 > メール
澤井

恐竜の鼻(−散歩道−)

呼吸困難の病気せいか普段感じないことが気になる。 その一つが恐竜。あの巨体に必要な空気量について考える
ティラノサウルス 犬
先ず体型身近な中型犬(体重8kg、体高35cm)と代表的巨大恐竜ティラノサウルス (体重6t、体高3.5m)を例に考える。
体高が10倍だから体重は体高比の3乗=1000倍と考えると納得できる。 この体重を支える骨の断面積は体重に比例すると考え、2足歩行も考慮すると脚の直径は40数倍と納得できる大きさである。
必要空気量について。静止時の基礎代謝から考える。 恐竜も哺乳類と同じ筋肉と考えると、基礎代謝は筋肉量に比例するから、体重に比例する。 したがって、呼吸の風速が同じなら鼻孔の断面積は1000倍必要。すなわち鼻孔の直径は30数倍となるはず。 化石を見ても復元図を見ても鼻孔はそれほど大きくない。
これで本当に動けたのだろうか? 鳥と同じく換気能力が2倍以上高かったとの説があるがこれだけでは説明しきれない。
  鳥の呼吸器は1方向に空気を流す流管式のガス交換器と常時それを使うための気嚢からなる。
  後者は交換器内の流量を半減できるが、たとえば呼気時用の空気も吸気時に取り込むため呼吸の流量は減らせない。
  前者は、気流とそれに平行する血流を逆方向にすることにより、出口の血中酸素濃度を倍増でき、呼吸量を軽減できる。
答えのヒントは意外なところにあった。遺伝子解析の結果、腐朽菌が木材分解能力を獲得したのは約3億年前と言う。 この時期まで、焼けず食われずに育つ樹木は大気中の炭酸ガスを吸収し酸素を吐き出し、倒れた後に元の炭酸ガスに戻らずに石炭に変化した。 このため3億年前ごろまで大気中の酸素濃度は上昇し続け約30%にもなった。 また、分解能力獲得後は樹木による炭酸ガスの吸収と放出は平衡し、酸素濃度に影響しないので、高濃度時代はかなり長期間続いたと考えられる。 この高酸素濃度の結果、恐竜は巨大化でき、昆虫も巨大化したと言う。
  昆虫は皮膚呼吸のため酸素の取り入れ量を制御できない。
  そのため、過剰な酸素を減らすよう、巨大化して体重当りの体表面積を減らしたという説がある。
なお、最近の遺伝子研究などから、ティラノサウルスは実は羽毛恐竜であったと言う。 したがって、熱放散が出来ず、活発な活動は狩猟出来なかったため、ゆっくりと死肉を漁っていたという説もある。 羽毛は少量で行動には支障がなかったという反論もあり、これでは説明にならない。
新説を提案しよう。
巨大化に伴う体重増加に見合った筋断面積が無いので急激な運動は無理。 そこで緩慢に死肉を漁って生活していた。したがって大量の呼吸も不要であった。
以上、恐竜の鼻孔が小さくても良かった理由と、古代に大量の石炭が出来た理由が分った。 体調不良がくれた収穫である。

最終更新:17/10/05
新規掲載:17/05/25
© T.Sawai
サイト内の広告について一切責任を持ちません
inserted by FC2 system