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澤井

停電事故-2(−散歩道−)

電力の需給に不均衡が起きる原因について簡単に述べました。 それでは、この不均衡がなぜ大事故に波及するのでしょうか。 これには発電所の性格が大きくかかわっています。
★ 現在大部分の電力は火力(原子力を含む)発電機で作られています。
大きな電力を発生するため発電機・蒸気タービンともに軸の長い機械を使用しています。 そのため低速で運転すると異常振動が起こりやすくなっています。 起動するときは、この危険な速度領域をできるだけ速やかに通り過ぎます。
需給の不均衡で速度が落ちると危険領域に近づきます。 そのため、運転責任者は無理をせず発電機を停止するのが普通です。 結果的には不均衡がますます増大することにつながります。
すなわち、需給の不均衡がある程度を超えると不均衡は将棋倒しに拡大します。
★ 火力発電所を運転するには大きな電力が必要です。
発電機を回すための蒸気を発生するには、圧力の掛かっているボイラーに水を供給しつづけることが必要です。 このためのポンプがかなり電力を消費します。
ボイラーに燃料と空気を送り込む必要があります。 これにも大きな電力が必要です。ただし原子力ではこれは不要です。
タービンを回した蒸気を水に戻す必要があります。 この水に不純物が混じるとタービンやボイラーを劣化します。したがって高価な純水を使用します。 したがって使い捨てでなく水を再利用(復水)します。 復水には通常大量の海水をくみ上げて蒸気を冷却します。このためにも大きな電力が必要です。
発電機を冷却しなければなりません。発電すると流れる電流で発電機は熱くなります。 この熱を取り去るために冷却材を循環する必要があります。
★ 発電機は急には起動できません。
停止中のタービン・発電機の軸は変形しています。軸の長い機械なので自重でたわみます。 ゆっくりまわして歪を取り去ってからでないと運転できません。
停止中のタービンは冷えています。急激に蒸気を送り込みますと熱歪で故障の原因になります。
これらの事情で、一旦停止した発電所は外部から電力の供給を得なければ起動できず、また起動に時間を要します。
この間不均衡は拡大しつづけ、全体が停止するとその全体は自分では回復できなくなります。
これが、大停電事故が波及し、長引く理由です。
熱を使わない・機械的な運動をできるだけ使わない電力の発生手段の開発が望まれます。 また電源の脱落の影響が全体に波及しないためには、小さい電源を分散させることも有効ですね。


最終更新:17/09/10
新規掲載:04/08/12
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