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澤井

停電事故-1(−散歩道−)

停電事故の影響と、事故が大きくなる原因を前に紹介しました。 そのいくつかについて考えましょう。

1.電力の貯蓄ができない
この性質から常に需要と供給が均衡している必要があります。これは、次の方法で解決しています。
自由勝手に変動するものも、沢山集めた合計はあまり変動しません(大数の法則→誤差の話)。 したがって供給地域を広域化すれば需要の変動は相対的に小さくなります。 この需要に対して、大きすぎない供給源(発電所)を多数集めて供給すれば安定した需給が可能となります。
需要の合計は、時刻・曜日・季節・気温・晴雨などにより大きく変動しますが、変動は遅く、またある程度予測できます。 したがって対応可能です。
アメリカは自由経済を旗印とし、電力会社も自由に設立できます。 その結果一見広域化していますが、小さな電力会社が独自の負荷に供給しています。 巧く働けば低コストのシステムになりますが、いったん均衡が崩れると問題が発生します。 幸か不幸か日本でもこの制度が取り入れられました。
2.電力の需要地と供給地が離れている
2000年現在、電力の大部分は火力(原子力を含む)発電所で作っています。 火力で蒸気を発生し、蒸気でタービンを回し、蒸気を冷やして水に戻し(体積を減らし)てボイラーに戻します。
蒸気発生のための燃料置き場、復水のための冷却水の確保のために大都市から離れた所に発電所が作られます。
アメリカ・ロシア・カナダなどでは国内に時差があります。したがって需要ピークがずれます。 これを積極的に利用すると少ない発電所で需要をまかなえます。 しかし、需給の距離が離れることになります。
一方、現在用いられている交流送電システムでは、全体を十分協調して運転することが必要です(理屈は省略)。 運動会のムカデの団体で祭りの山車を引く場面を思い出して下さい。完全に協調出来ると人数分の力が出せます。 誰かがつまづけばかなり重荷になります。一人が転べば全体が転ぶ可能性さえあります。 一旦協調体制が崩れると供給が激減し、需給は益々不均衡になります。
距離が離れると落雷その他の事故を受けやすくなります。また、離れると電力の流れの制約が強くなります。 これらの影響で、上述の協調体制が崩れる原因となります。
電力会社は中枢部に置いた中央給電指令所の指示によって協調体制を保っています。
アメリカの事故は、多数の電力会社間の協調体制の乱れによって拡大しました。 日本でも1960年代小さな落石事故が波及して全社半日停電したことがあります。
哺乳類は、必要な機能をそれに適した場所に選択配置し、全体を統合する器官を設けました。 これは非常に巧く機能し生物の頂点に立ちました。 しかし統合をつかさどる器官を中央に置かなかったために弱点が生じました。 この弱点を neck と呼びます。
下等動物のプラナリアは統合機能が弱いため機敏な動作はできません。 しかし何かの事情で体を分断しても断片はそれぞれ統合体として生き続けることができます


最終更新:17/09/09
新規掲載:04/08/12
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